給与から何が引かれているのか?控除の全解説(2026年版)
手取りと額面の違いとは
求人票や雇用契約書に記載されている「年収・月収」は「額面(総支給額)」と呼ばれます。実際に銀行口座に振り込まれる「手取り額」は、この額面から社会保険料と税金を差し引いたものです。一般的に手取りは額面の75〜85%程度になります。年収が上がるほど税率が高くなる累進課税の影響で、高収入ほど手取り率が下がります。
社会保険料の内訳(2026年度)
給与から差し引かれる社会保険料は以下の4種類です(会社員・協会けんぽ加入者の場合)。
- 健康保険料:標準報酬月額の約10.0%(従業員負担5.0%)。医療費の一部を賄う保険です
- 厚生年金保険料:標準報酬月額の18.3%(従業員負担9.15%)。老後の年金の原資になります
- 雇用保険料:賃金総額の0.6%(従業員負担)。失業時の失業給付・育児休業給付等の財源です
- 介護保険料:40歳以上のみ。標準報酬月額の1.60%(従業員負担0.80%)。介護サービスの費用を賄います
月収30万円(年収360万円)の社会保険料の目安:
健康保険料:約15,000円/月(年約18万円)
厚生年金:約27,450円/月(年約32.9万円)
雇用保険:約1,800円/月(年約2.2万円)
合計:約44,250円/月(年約53.1万円)
所得税の計算方法(累進課税)
所得税は課税所得(年収から各種控除を差し引いた金額)に応じた税率が適用される「累進課税」です。課税所得が少ない部分には低い税率、高い部分には高い税率が段階的に適用されます(超過累進税率方式)。
| 課税所得 | 税率 | 控除額 |
| 195万円以下 | 5% | 0円 |
| 195万〜330万円以下 | 10% | 97,500円 |
| 330万〜695万円以下 | 20% | 427,500円 |
| 695万〜900万円以下 | 23% | 636,000円 |
| 900万〜1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
| 1,800万〜4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
| 4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
住民税の計算方法
住民税は前年の所得に対して翌年6月から課税されます。所得割(課税所得の10%:都道府県4%+市区町村6%)と均等割(年約5,000円)で構成されます。そのため転職・退職した年は前年の高い所得に対して住民税が課される場合があり、注意が必要です。
手取りを合法的に増やす節税方法(2026年版)
- iDeCo(個人型確定拠出年金):掛け金が全額所得控除。会社員は月2.3万円まで。年収500万円の方が満額積み立てると年間約5.5万円の節税効果(所得税20%・住民税10%の場合)
- ふるさと納税:実質自己負担2,000円で返礼品がもらえる制度。寄付金額の約3割相当の返礼品を受け取りつつ、住民税・所得税の控除を受けられます
- 新NISA:投資利益が非課税に。年間360万円まで(つみたて120万円+成長投資240万円)の投資が可能
- 医療費控除:年間10万円超の医療費は確定申告で控除できます(総所得金額の5%が10万円より少ない場合はその金額)
- 住宅ローン控除:住宅ローン残高の0.7%が最長13年間、所得税・住民税から控除されます
- 生命保険料控除:生命保険・医療保険の保険料は最大12万円の所得控除になります
💡 年収の壁に注意:年収103万円(所得税の扶養控除の壁)・106万円(社会保険加入の壁)・130万円(配偶者の扶養から外れる壁)などの「年収の壁」があります。扶養内で働く方はこれらの金額に注意して働き方を調整しましょう。2026年現在、政府は「年収の壁」の見直しを検討中です。
❓ よくある質問
年収500万円の手取りはいくらですか?
年収500万円・独身・40歳未満・扶養家族なしの場合、手取りの目安は約394万円(月約32.8万円)です。内訳は健康保険料約25万円・厚生年金約45万円・雇用保険約3万円・所得税約15万円・住民税約24万円です。扶養家族がいる場合や各種控除(iDeCo・生命保険等)がある場合は手取りが増えます。
額面と手取りの差はなぜこんなに大きいのですか?
日本の社会保険料(健康保険・厚生年金・雇用保険)は給与の約15%前後(本人負担分)を占め、これに所得税・住民税が加わります。年収500万円の場合、社会保険料と税金の合計は約106万円(約21%)にもなります。さらに会社も同程度の社会保険料を負担しているため、総人件費から見るとさらに差が大きくなります。
手取りを増やすために何をすればいいですか?
最も効果的な節税方法は①iDeCo(掛け金が全額所得控除・年間2.3〜5.5万円の節税効果)②ふるさと納税(実質2,000円で返礼品+住民税軽減)③新NISA(投資利益が非課税)④医療費控除(年10万円超の医療費を控除)です。特にiDeCoとふるさと納税は手続きが比較的簡単で効果も大きく、まず始めるべき節税策として多くのFPが推奨しています。
年収が上がると手取りの割合が減るのはなぜですか?
日本の所得税は「累進課税」を採用しており、所得が高いほど税率が上がります。年収300万円の実効税率は約5%程度ですが、年収1,000万円では約15%前後になります。また住民税も所得に連動して増えます。社会保険料は標準報酬月額に上限があるため、高収入者は社会保険料の実質負担率が低くなりますが、税金の増加がそれを上回ります。
フリーランス・自営業の手取り計算は違いますか?
フリーランス・自営業者は厚生年金・健康保険(会社員向け)ではなく、国民年金・国民健康保険に加入します。保険料の計算方法が異なり、会社が負担していた分(厚生年金の半額)も自分で支払う必要があるため、同じ収入でも会社員より負担が大きくなります。また確定申告が必要で、経費控除により課税所得を減らせるメリットもあります。
賞与(ボーナス)の手取りはどう計算しますか?
賞与からも社会保険料と所得税が差し引かれます。社会保険料は賞与額×保険料率で計算されます。所得税は「賞与に対する源泉徴収税率」が使われ、前月の月収に応じた率が適用されます。一般的に賞与の手取り率は月給より低くなる傾向があります(理由:所得税率が前月給与から算出されるため、年収が高い人ほど賞与の手取り率が下がる)。
転職で年収が上がったのに手取りが思ったより増えない理由は?
主な理由は①累進課税による税率上昇(年収アップで所得税・住民税が増える)②社会保険料の増加③年収アップで扶養控除・配偶者控除の対象から外れる場合がある——などです。特に「年収の壁(103万円・130万円・201万円など)」を超えた場合、控除額が急減して手取りが大きく変わることがあります。転職前に手取り計算ツールでシミュレーションすることをお勧めします。
住民税が翌年課税になる理由は何ですか?
住民税は「前年1月1日〜12月31日の所得」に対して翌年6月から課税・徴収されます。これは行政の手続き上、確定申告(3月15日締め)の結果を受けてから課税額を計算するためです。そのため退職・転職した年に注意が必要で、前職での高い収入に対する住民税が翌年に請求される「退職後住民税の大波」を経験する人が多いです。
扶養家族が増えると手取りはどう変わりますか?
扶養家族が増えると所得控除(扶養控除)が増え、所得税・住民税が減ります。配偶者控除(年収103万円以下の配偶者)で最大38万円、子どもの扶養控除で1人あたり38〜63万円の所得控除が受けられます。また子どもが16〜18歳は「特定扶養親族」として63万円の控除となり、節税効果が大きくなります。社会保険の扶養(年収130万円未満の家族)に入ると保険料負担なく健康保険が使えます。
「手取り年収」と「可処分所得」の違いは?
「手取り年収」は給与から税金・社会保険料を差し引いた金額です。「可処分所得」は手取り年収からさらに家賃・食費・光熱費などの生活費を差し引いた「自由に使えるお金」のことです。家計管理や貯蓄計画を立てる際は、手取りではなく可処分所得(自由に使えるお金)を把握することが重要です。一般的に手取りの20〜30%を貯蓄に回すことが推奨されています。